
 私は、いつもゼロやマイナスから出発して、新しいものをつくる立場におかれてきた。 
    だから、少しくらい困難にぶつかっても、くじけない。 
    私は、無である。ハダカである。知恵も、財産も、信用もない。 
    この心境に立って考えれば、おのずと活路が開けてくる。 
 与えられた仕事を、命じられたままトレースするのではなく、 
    自分の持つ知識、技術、アイデア等々、何かをプラスしてみよ。 
    先人の歩んだ足跡よりも、大きなものを残す気概、それが大切だ。 
 どんなときでも、まず、相手の立場を考えよ。 
    相手の便利、経済、楽しみ、よろこび、そして、繁栄が第一だ。 
    それらを、自分の事業に結びつけてこそ、自分の幸福が、得られるのだ。 
 水は、低きに向かって流れるのが道理である。 
    しかし、当事者として仕事に没頭していると、枝葉末節に気をとられ、 
    道理や本質を見失うことが多いものだ。 
    何事も本質を見きわめ、合理的に考えよ。 
 私にとって、見るもの聞くものすべてが先生である。 
   私は博士ではなく白紙だ。 
    だから、見るもの、聞くものすべてがノートできる。 
    私には専門はない。営業をやれといわれれば営業をやる。 
    製造を命じられれば製造をやる。研究をやれといわれれば、 
    人の知恵を生かして研究することもできる。 
 私は、何事もやればできるという自信を持っている。 
    若い諸君は、いろんな困難に遭遇するだろう。しかし、自信を失ってはならない。 
    その困難を乗り越えていく、打ち勝っていく、それが、成否の分かれ道だ。 
    困難にあわない人生はあり得ない。もしあるとすれば、それは怠けている証拠である。 
 三洋電機20年の歩みは、たえず先手を打ち、お客の心をとらえた企業が、 
    いかに強いかということを示しているのではないか。 
    真の競争相手は先輩同業メーカーではなく、日々これ大衆に、いかに受け入れられるか、その戦いに勝つものだけが、発展を約束されるのだ。 
 地球は、年々せまくなっている。どこかの国で良い商品ができれば、直ちに、運賃と関税障壁を乗り越えて、世界を風靡してしまう。 
    文化や産業に関する限り、世界は一国といえよう。 
    世界の視野に立って考え、行動したいものだ。 
 人間の眼はカラーである。 
    ただ、われわれの技術が及ばずして、白黒で、テレビを見て頂いてきた。 
    やがて、カラーテレビは、世界中の人びとが、見るようになるに違いない。