第39回井植文化賞は 4名の個人と2つの団体が選ばれ、表彰式が平成27年10月3日(土)に、井植記念館で執り行われました。
たかとう 匡子 氏
詩 人
戦災・震災を経験し43年間の教師生活が終わったあとに発表された詩集「学校」は震災・教育という現実を見据えながら詩を通して若者と分かち合える言葉を生み出したいとの想いが込められた作品となりました。また、空襲で妹を亡くした幼い頃の体験から生み出された詩集「ヨシコが燃えた」は絵本にもなり、貴重な追体験として親から子へ子から孫へと伝えられる心に残る作品と評価されています。近年の女性詩人の考察における取り組みも新たなライフワークになることも期待されるとともに長年にわたる創作活動が評価されました。
杉本 直己 氏
学校法人甲南学園 理事
甲南大学先端生命工学研究所(FIBER)所長・教授
兼大学院フロンティアサイエンス研究科教授
― 神戸市東灘区在住 ―
生命化学研究における世界の第一人者として生命システムを制御する有用な物質創出を目的に核酸の化学的な挙動の解明に取り組んでおられます。細胞内で働く優れた機能性分子の作成技術を確立され、がんやその他の後天的疾患の診断・予防のみならず再生医療分野におけるES細胞やiPS細胞などの分化の制御も可能にさせ、農業・食品分野における安全な有用物質の大量生産や品種改良などへの応用とともに、DNAを自在に制御し病気を未然に防ぐ新たな研究にも挑まれ、今後一層の活躍が期待され、その成果と功績が評価されました。
牧 秀一 氏
NPO法人阪神淡路大震災よろず相談室 理事長
― 神戸市東灘区在住 ―
阪神淡路大震災発生直後から避難所で始めた、被災者の相談に乗り必要な情報を届けるボランティア活動が「よろず相談室」の原点となり、以来、仮設住宅・復興住宅への訪問活動を通じて孤立しがちな高齢者を励まし続ける一方、孤独死や借りあげ住宅返還などの問題提起や震災障がい者問題にも向き合い「集いの場」での心のケアに努め、行政にも働きかけ実態調査や相談窓口の開設などを実現されました。東日本の被災地でも神戸の教訓を発信し、人に寄り添う訪問活動の必要性を若者に伝えてこられました。そのような活動が多くの若者に引き継がれていくことへの期待が評価されました。
NPO法人 こどもとむしの会
理事長:内藤 親彦 氏
兵庫県昆虫館の廃館を機に「小さくても昆虫館は大事」という呼びかけで、かつての昆虫少年たちがNPO法人を立ち上げ「こどもと虫の秘密基地」をコンセプトに2009年4月佐用町昆虫館が再開されました。ところが同じ年の9月に台風の惨事にみまわれることになり、土砂に埋まった昆虫館は再び存亡の危機にみまわれましたが、阪神大震災の経験者たちの尽力を得て、翌春再々開をはたしました。困難を乗り越えての運営は昆虫館を核に「こども昆虫道場」「いどうこんちゅうかん」の活動や東日本大震災で被災した博物館支援など「自然といのちの営みを通し絆のバトンをつなぎ」東北の子どもたちとの交流へと展開され、それらの活動が評価されました。
西村 恭子 氏
作 家
―兵庫県加古川市在住 ―
西村 恭子 氏
横浜人形の家取材
昭和初期に友好の証しとしてアメリカから贈られた約13,000体の「青い目の人形」は太平洋戦争時には敵国の象徴として迫害され、数奇な運命をたどりました。国内での現存は約360体。その中の2体の人形との出会いから戯曲を制作され、上演の過程で「メリー」という人形を見つけられました。以来メリーを通じ国際交流の大切さを説き続け、兵庫県内に残る人形探しのドキュメント番組を制作、戦後70年の今年13回シリーズの番組「青い目の人形メリー再会の旅」としてラジオ関西で放送され、新たな人形の発見にもつながりました。心ある市民に守られた人形を通じて命と平和の尊さを世に問う優れた取り組みが評価されました。
NPO法人 神戸定住外国人支援センター(KFC)
理事長: 金 宣吉 氏
― 所在地:神戸市長田区 ―
阪神淡路大震災後ボランティアによって生まれた組織を基に、日本人と在日マイノリティが共に生きる社会の実現を目的に設立された「神戸定住外国人支援センター」は、神戸市長田区を本拠として、外国人住民のための生活相談や支援、日本語教室の運営や外国にルーツを持つ子どもの学習支援、奨学金の支給等の活動を続けています。また、高齢者の民族性や歴史的背景を尊重した居場所づくりとして多言語対応グループホーム「ハナ」を開設され、国や文化背景の異なる人たちが自分らしく暮らし、一人一人が大切にされる施設として注目されています。着実な地域の国際化を進めている活動が評価されました。