第40回井植文化賞は 2名の個人と4つの団体および1名の特別賞が選ばれ、表彰式が平成28年10月1日(土)に、井植記念館で執り行われました。
武谷 なおみ 氏
イタリア文学研究家、随筆家
小学五年生のとき メゾソプラノ歌手のジュリエッタ・シミオナートさんとの出会いからイタリアへの関心が芽生え、その後イタリア語を学びオペラからシチリア文学の研究へと進まれました。1990年代にイタリア料理ブームが始まり、美食の国イタリアへの関心が高まりつつある頃に翻訳刊行された「古代ローマの饗宴」が、優れたイタリア語翻訳書に与えられる第5回「ピーコ・ミランドラ賞」を受賞、近年では「ランペドゥーザ全小説(共訳)」「短編で読むシチリア(編訳)」での2014年度「地中海学会賞」の受賞が注目されました。日伊修好通商条約が結ばれて今年で150年、二つの国を行き来しながら考え、書き、神戸から発信し続ける活動が評価されました。
畑 豊 氏
兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科科長・教授
― 姫路市在住 ―
医療・ヘルスケア技術分野へ情報処理技術を適用する研究を推進してきたパイオニアの一人であり、特にアルツハイマー病診断画像装置をはじめとする各種X線CT/MR画像解析診断支援装置などは医療現場で高く評価されています。さらに超音波技術と情報処理技術を組み合わせたX線被曝を伴わない脳画像処理技術や外科手術支援等のシステム開発や、最近では生体情報・検診情報のビックデータ解析や免疫系情報処理技術の研究に取り組まれ、未病・予防医学、予想医学など最先端のAI医療情報技術の展開を図られています。卓越した識見と情熱的な指導で多くの学生を引きつけ、グローバルな人材の育成にも努められ、その成果と功績が評価されました。
NPO法人 ネットワークながた
理事長:石倉 泰三 氏
― 所在地:神戸市長田区 ―
「身体や知的なハンディを持つ人たち働ける場所を作りたい」との思いで1994年に共働作業所「くららべーかりー」が開設されました。その翌年の一月に発生した阪神・淡路大震災をきっかけに、被災した小規模の障がい者の作業所や支援団体が、お互い支え合い・助け合うという関係が生まれました。そのつながりが強い絆となり2006年には「NPO法人ネットワークながた」が設立され、以来震災を風化させないようにと百回にも及ぶ毎月の「一七市」の開催や「一・一七神戸に灯りをinながた」への参画を続けられるとともに、生活介護事業所「さくら」や個性の作業所「七つの海」を開設運営され、地域で生活し働く障がい者の支援を続けられてる活動が高く評価されました。
認定NPO法人 コムサロン21
理事長:前川 裕司 氏
「自分たちが暮らしている播磨地域の未来はどうなっていくのか、自分たちができることからやってゆこう」とコムサロン21の活動が始まって25年。生きがいと魅力ある街づくり、若者が住みたい街づくりを目標に様々な市民運動のサポート業務を行ってきました。「食のまち・姫路」づくりの活動においては、姫路食博の毎年開催にこぎつけ、ご当地グルメ「姫路おでん」の提唱と普及活動は、食を通じた観光資源づくりと経済効果の生み出しに貢献されました。これからも世界遺産姫路城と共に、人と地域の活性化のためや若者が元気に地域で活躍できる魅力ある姫路づくりを提唱し続けていく活動が評価されました。
ひょうごの在来種保存会
顧問:山根 成人 氏
― 所在地:兵庫県姫路市 ―
山根成人氏(中央)と
エビイモ農家の岡本ご夫妻
出版図書
かつて、野菜は畑で花を咲かせ実を結び種を採取していました。遺伝子操作が発達し、種取り作業が農業から消え、いつしか種は購入するものになっていきました。「ひょうごの在来種保存会」は兵庫県の風土に根を張り、農家の手で毎年栽培し種を取り続けることでつないできた固有の野菜を調査し、その種を守る運動に携わり、農家とのネットワークを作り上げ貴重な在来種を守り続けてきました。「保存会通信」の記録や活動を整理し、13人の共同執筆で出版された「ひょうごの在来作物 つながっていく種と人」は20年以上も野生化していたものから種を取って栽培を再開した「ハリマ王ニンニク」など九十品種の紹介や保存活動をまとめた貴重な一冊となりました。このような優れた取り組みが評価されました。
OneDrop バングラデシュ教育支援の会
代表:大西 登志子 氏
― 所在地:兵庫県加古川市 ―
初めてバングラデシュを訪れた際に、学校に行けず働きながら路上生活をする多くの子どもたちの姿を目にしたことをきっかけに、バングラデシュに楽しい学校を作ろうという目的で「ワンドロップ」は結成されました。「貧困の連鎖を断ち切るために子どもたちに教育の機会を」との呼びかけに有志が集まり、現地と交流する一方で東播・北播地域を中心に募金を呼びかけ5年間で250万円を集め、建設費の7割を助成し、今年1月にコミラに小さな学校が開校しました。その後もサポーターを募り、給食費支援や奨学金制度でバングラデシュの子どもたちに支援を確実に届ける活動を続けています。今後の活躍が期待され、その活動が評価されました。
巽 好幸 氏
神戸大学大学院理学研究科 惑星学専攻 教授
海洋底探査センター教授、センター長
― 神戸市東灘区在住 ―
マグマの成因論と地球の進化に関する研究で世界をリードされ、地球上の沈み込み活動に認められる特徴を解析、実験やシミュレーションを元にプレートが吐き出した水溶性元素を溶かし込んだ水がマントルを溶解してマグマが発生するメカニズムや、初期地殻が安山岩質に進化する過程の解明、沈み込み帯はプレート物質を原料としてマグマを作り大陸という製品を生み出す工場であるという概念を提唱され、その概念は地球科学会に広く定着しています。直近では、日本列島で度々起きていたカルデラ噴火のリスクとハザードを明示され、噴火メカニズムの解明にむけた研究の推進や教科書・一般書の執筆やマスコミ活動にもこれらの成果を広めておられます。その成果と功績が評価されました。